古典怪談映画の金字塔『東海道四谷怪談』を紐解く~こちらのお岩さんの方が怖いですね…。

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東海道四谷怪談 (1959年の映画)のサムネイル
東海道四谷怪談』(とうかいどうよつやかいだん)は、1959年(昭和34年)7月14日に封切り公開された時代劇日本映画である。中川信夫監督、新東宝製作・配給、シネマスコープ、総天然色映画(フジカラー)、9巻 / 2,088メートル(1時間16分)、映倫番号:11266。怪談映画の最高傑作として知られている。…
28キロバイト (4,727 語) – 2024年9月25日 (水) 16:17

1. 『東海道四谷怪談』とは


『東海道四谷怪談』は、1959年7月14日に公開された日本の時代劇映画で、中川信夫監督の下、新東宝によって製作されました。日本映画のシーンにおいて、初めてカラーで撮影された怪談映画としても知られ、その技術的功績や物語の深さから、怪談映画の最高傑作の一つとして広く認識されています。

物語の舞台は江戸時代の中ごろ。備前岡山藩の浪人、民谷伊右衛門とお岩の壮絶な愛憎劇が描かれています。かつての婚約が破談となり、怒りに駆られた伊右衛門は凄惨な事件に巻き込まれることになります。お岩の父を斬り捨てたことで始まったこの物語は、愛や妬み、裏切りといった人間の深い感情と業の描写が印象的です。

映画は、多くの映画化を経験している鶴屋南北の原作『四谷怪談』を基にしており、その中で初めてカラーで描かれたことで、視覚的にも強いインパクトを残しています。中川監督の力強い演出と、黒澤治安の美術は、物語に適した色彩と空気を生み出し、観客を惹きつけました。特に、血の池を思わせる隠亡堀のシーンに代表される「赤」を基調にした色彩は、映画全体のトーンを決定づけています。また、助監督で脚本を担当した石川義寛が、現場で大幅に脚本を書き直したというエピソードからも、作品への情熱と努力が伺えます。

役者陣の演技もまた、この映画を特別なものにしています。伊右衛門役の天知茂は、その迫力ある演技で観客を圧倒し、映画全体のクオリティを更に高めました。これらの要素が組み合わさり、『東海道四谷怪談』は単なる怪談映画の枠を超え、人間の根源的なテーマを探求する作品として、時を越えて語り継がれています。

2. 映画のあらすじ


江戸時代中期、備前岡山藩の浪人である民谷伊右衛門は、運命的な出会いを経てお岩と結婚することになりました。しかし、その婚儀はお岩の父である四谷左門によって反故にされ、伊右衛門は怒りに任せて左門を斬り捨ててしまいます。この事件の後、伊右衛門は中間の直助にそそのかされ、左門の死を金蔵破りの犯罪によるものだとお岩とお袖に嘘をつくことで事態を乗り切ろうとします。伊右衛門たちは仇討ちの名目で江戸への旅を出発します。しかし、そこには先々に待ち受ける裏切りと悲劇がありました。

旅の途上で、同行するお袖の許婚である佐藤与茂七が直助の計略にはまり、命を落としてしまいます。伊右衛門はますます深い闇に引き込まれていく中で、お岩との間に子供が生まれ、一見幸せなように見える生活も、実は伊右衛門の心に巣食う絶望と欺瞞の色を増すばかりでした。やがて彼は旗本の伊藤喜兵衛の娘、お梅に近づくことになります。

伊右衛門は直助とお梅の乳母の罠にはまり、お岩に毒薬を飲ませてしまいます。それによりお岩は酷い姿に変わり果て、乱心に至ります。お岩の死の後、亡霊となった彼女の存在は伊右衛門に対する執念の象徴として、彼を狂わせていきます。伊右衛門が引き起こすさらなる悲劇と、その運命の結末は、彼とお岩の魂を安らぎへと導く仇討ちとして最終章を迎えることになります。

3. 制作の背景


『東海道四谷怪談』は、1959年に公開された時代劇の怪談映画であり、その制作背景には数多くの拘りと挑戦が詰め込まれています。
原作である『四世鶴屋南北の四谷怪談』は、これまでに21回も映画化されている古典的な物語で、その中でも本作が特に注目されたのは、新東宝による2度目の映画化であることと、初のカラー映画として制作されたことにあります。
中川信夫監督は、『人間の業の深さ』というテーマを全面に押し出し、通常の怪談映画とは一線を画す作品作りを目指しました。

4. 評価と反響


中川信夫監督による『東海道四谷怪談』は、その深いテーマ性と独自の映像美学で、映画史に残る金字塔として高く評価されています。
彼が意図した『人間の業の深さ』というテーマは、多くの映画評論家やファンから深い共感を呼び起こし、当時の観客にも強いインパクトを与えました。
この作品は、ただ恐ろしいだけの怪談ではなく、人間の内面的な恐怖や葛藤を描いた作品とされています。
他にも、石川義寛の脚本修正と苦労も広く語られています。
彼は製作期間中、脚本の半分以上を書き直すという多大な労力を投じ、自ら『一番苦労した怪談映画』と評しています。
この情熱と努力が、映画の緻密なストーリーラインとキャラクターの深みを生み出し、その完成度をさらに高めました。
そして、役者たちの演技が本作のもう一つの成功の要因として挙げられます。
特に、天知茂の存在感あふれる演技は、多くの観客を魅了しました。
彼をはじめとするキャストの一人一人が、独自の個性を存分に発揮し、物語に深みを与えています。
公開当時、この作品は既に過去20作品以上製作されてきた『四谷怪談』ものの中で、新しい息吹をもたらしたとして話題になりました。
初めてのカラー映画という点でも、視覚的インパクトを強く与え、多くの観客に新鮮な驚きを提供しました。
これらの要素により、『東海道四谷怪談』は映画ファンに長く愛され続ける作品となりました。

まとめ


『東海道四谷怪談』は1959年に公開された中川信夫監督の代表作であり、日本の時代劇映画の中でも特に評価の高い怪談映画です。この映画は、江戸時代中期を背景に、人間の欲望や罪業といったテーマを見事に映し出しています。

物語は、浪人・民谷伊右衛門を中心に展開します。伊右衛門は、ある誤解からお岩の父を殺害し、彼の娘たちとの複雑な関係性の中でどんどん深みに嵌っていく様子が描かれます。伊右衛門の罪と嘘を重ねる生き方は、人間の持つ根深い業を具象化しており、ここに登場する怪談要素がただの恐怖を超え、観客に多くのことを考えさせます。

この映画では、今井正が演じる伊右衛門の激しい演技が光り、観る者の心に強烈な印象を残します。また、美術設定では、隠亡堀の水が血の池のように描かれ、背景の色調は映画全体に緊張感を与えています。制作チームは約23日間の長い撮影期間をかけてこの効果を追求し、極めてリアルな世界を創り出すことに成功しました。

『東海道四谷怪談』は単なる怪談映画を超えた、時代劇や人間劇としての深さがあり、後世に影響を与え続ける傑作です。人間の業の深さを描いたこの作品は、ただ幽霊の恐怖を訴えるだけでなく、観る者に人間の持つ根本的な心の闇を考えさせる内容です。

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