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1993年に公開されたアメリカ映画『バタリアン リターンズ』(原題:Return of the Living Dead 3)は、「バタリアン(Return of the Living Dead)」シリーズ第3弾にあたる作品です。コメディ色が強かった前2作とはまったく異なり、バイク事故で死んだ恋人をトライオキシンガスで蘇生させた少年と、ゾンビ化した恋人との悲恋の逃避行を真剣に描いたロマンティック・ホラー映画として、シリーズ中でも独特の位置を占めています。監督は『ゾンビオ/死霊のしたたり2』『ブライド・オブ・リ・アニメーター』のブライアン・ユズナ、ヒロインのジュリーを演じたのは後にドラマ「The O.C.」などで知られるメリンダ・クラーク(当時はミンディ・クラーク名義)。また特殊メイクを担当したスティーヴ・ジョンソンによるジュリーの変貌ぶりが本作最大のビジュアル的見どころとなっています。本記事では作品概要・あらすじ・キャスト・制作背景・評価まで、公的情報をもとに詳しく解説いたします。
作品概要:基本情報
『バタリアン リターンズ』(原題:Return of the Living Dead 3)は、1993年に製作・公開されたアメリカのロマンティック・ホラー映画です。「バタリアン」シリーズ第3弾にあたります。日本では劇場未公開となり、「バタリアン リターンズ」のタイトルでビデオスルーされました。
監督はブライアン・ユズナ、脚本はジョン・ペニー、製作はブライアン・ユズナ、ゲイリー・シュモーラー、ローレンス・スティーヴン・マイヤーズほか、撮影はジェリー・リブリー、編集はクリストファー・ロス、音楽はバリー・ゴールドバーグ、特殊メイクはスティーヴ・ジョンソンが担当しています。製作会社・配給はトライマーク・ピクチャーズです。アメリカでの公開日は1993年10月29日で、カリフォルニア州サンタクラリタ・スタジオにて1992年10月から11月にかけての24日間で撮影が行われました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 邦題 | バタリアン リターンズ |
| 原題 | Return of the Living Dead 3 |
| 製作年 | 1993年 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | ブライアン・ユズナ |
| 脚本 | ジョン・ペニー |
| 撮影 | ジェリー・リブリー |
| 音楽 | バリー・ゴールドバーグ |
| 特殊メイク | スティーヴ・ジョンソン |
| 製作費 | 約200万ドル |
| 上映時間 | 97分 |
| 米国公開 | 1993年10月29日 |
| 日本での扱い | 劇場未公開(ビデオスルー) |
| 米国興行収入 | 約5万4,207ドル |
前作との関係:コメディから一転、真剣な悲恋ホラーへ
前2作の「バタリアン」シリーズは、ゾンビの恐怖とブラックコメディが融合した娯楽色の強い作品でした。しかし本作はそうした路線から完全に離れ、「ゾンビ化した恋人を蘇生させた少年」という設定をベースに、シリアスな悲恋物語として展開されています。
監督のブライアン・ユズナは、前2作のコメディ的要素を意図的に排し、「ばかばかしさはあるが、真剣に演じる(stupid and fun, but played straight)」というトーンを目指したと語っています。制作時に前作でも人気だったジェームズ・カレンとドン・カルファを起用しようとするアイデアも一時あったとされていますが、コメディ色が強まることを懸念して見送られました。
本作で唯一前作と共通する設定は、トライオキシンガスによってゾンビが蘇るというシリーズ共通の世界観です。それ以外は新たなキャラクターによる全くの独立した物語となっています。
あらすじ:バイク事故で死んだ恋人を蘇生させた少年の悲劇
軍の秘密施設で働く大佐ジョン・レイノルズ(ケント・マッコード)の息子カート(J・トレヴァー・エドモンド)は、反抗的な少女ジュリー・ウォーカー(ミンディ・クラーク)と深く愛し合っていました。ある日、カートとジュリーは父の施設のIDカードを使って軍の研究施設に忍び込み、トライオキシンガスによって死体を蘇生させる実験の現場を目撃してしまいます。
その後、父からの転勤命令をめぐってカートと父が口論になり、カートはジュリーとバイクに乗って飛び出します。しかし走行中にトラックを避けようとして事故が起き、ジュリーが命を落としてしまいます。
絶望したカートは、先ほど目撃した軍の施設に忍び込み、ジュリーにトライオキシンガスを注入して蘇生させます。蘇生したジュリーは意識と感情を持ったまま戻ってきましたが、次第に人間の脳への強い欲求に苦しめられていきます。痛みを与えることでその欲求を一時的に抑えられることに気づいたジュリーは、自らの体に金属を刺し込み傷つけることで衝動をコントロールしようとします。
軍に追われながら下水道に逃げ込んだ2人は、そこで出会う人々に絡まれながら逃避行を続けます。やがてジュリーの変貌は止めようのないところまで進み、2人は究極の選択を迫られることになります。
キャスト紹介
ミンディ・クラーク(ジュリー・ウォーカー役)
本作の実質的な主役で、ゾンビ化していく恋人ジュリーを演じています。現在はメリンダ・クラークとして知られる女優で、本作当時はまだ映画界でのキャリアを積み始めたばかりでした。後に長寿ドラマ「The O.C.」などへの出演で知られるようになります。ジュリーをドラッグ中毒に似た状態として解釈し、ゾンビではなくジャンキーとして演じたという独自のアプローチが高く評価されています。スティーヴ・ジョンソンによる精巧な特殊メイクを纏ったジュリーの変貌ぶりは本作最大の見どころです。
J・トレヴァー・エドモンド(カート・レイノルズ役)
死んだ恋人を蘇生させる少年カートを演じる主演俳優。90年代グランジファッションを身にまとった若者として、ジュリーへの一途な愛情を体現しています。
ケント・マッコード(ジョン・レイノルズ大佐役)
カートの父親で、軍の秘密研究施設に関わる大佐を演じています。1968年から1975年にかけて放送されたアメリカの人気テレビドラマ「特捜隊アダム-12」でブレイクした俳優で、本作への出演は我が子を喜ばせたいという動機からであったと伝えられています。
サラ・ダグラス(シンクレア中佐役)
軍の研究施設の上官を演じています。映画『スーパーマンII』(1980年)や『コナン・ザ・グレート』(1982年)への出演で知られるイギリス出身の女優です。
ベイジル・ウォレス(リバーマン役)
下水道に住む謎の人物を演じています。
このほか、ジェームズ・T・キャラハン、アビゲイル・レンツ、サル・ロペス、ダナ・リーらが脇を固めています。
制作背景:スティーヴ・ジョンソンの特殊メイクとブライアン・ユズナの世界観
本作の制作で特筆すべきは、特殊メイクを担当したスティーヴ・ジョンソンの仕事ぶりです。ジュリーが徐々にゾンビへと変貌していく過程を表現するために、金属を体に刺し込んだ独特のビジュアルが考案されました。セノバイト(クライヴ・バーカーの「ヘルレイザー」シリーズに登場する拷問的な存在)を連想させるとも評されるジュリーの最終形態は、本作のビジュアル的なハイライトとなっています。
監督のブライアン・ユズナは、それ以前に『ゾンビオ/死霊のしたたり』(1985年)の製作、『フロム・ビヨンド』(1986年)の製作、そして『ゾンビオ/死霊のしたたり2』(1990年)、『ブライド・オブ・リ・アニメーター』(1990年)の監督を手がけた、B級ホラー映画の実力者です。本作でユズナ監督が目指したのは、観客がジュリーの悲劇に感情移入できる作品を作ることでした。コメディで笑わせるのではなく、ゾンビになってしまったジュリーの苦悩と、それでも愛し続けるカートの姿をシリアスに描くことに重点が置かれています。
本作にはR指定版とアンレイテッド(無審査)版の2バージョンが存在します。アンレイテッド版はよりグロテスクな描写が含まれており、ホラーファンの間では長らくVHSでのみ入手可能でした。後にライオンズゲートのVestronビデオ・コレクターズ・エディションとして、アンレイテッド版がBlu-rayでリリースされています。なお2024年には、長らく失われていたさらに長いカット(ロスト・カット)が発見されたことが報じられており、本作への新たな注目が集まっています。
公開と評価
本作は米国での興行収入が約5万4,207ドルという非常に限定的な劇場公開にとどまりましたが、ビデオリリース後に熱狂的なファンを獲得し、「バタリアン」シリーズのなかで最も高い評価を受ける作品のひとつとなっています。
批評面では、前2作のコメディ路線からの転換を評価する声と、ホラーコメディとしての楽しさが失われたとする声が分かれています。しかしミンディ・クラーク(メリンダ・クラーク)の演技の質の高さと、スティーヴ・ジョンソンによる特殊メイクの完成度については、批評家・ファン共に高く評価する声が多くあります。ゾンビ映画としてだけでなく、「死んだ恋人との悲恋」という普遍的なテーマを扱ったロマンティック・ホラーとして再評価が進んでおり、現在もカルト映画としての地位を確固たるものとしています。
まとめ:シリーズの常識を覆したゾンビ悲恋映画の隠れた名作
『バタリアン リターンズ』は、コメディ路線を徹底的に排して「ゾンビ化していく恋人との悲恋」というテーマに真摯に向き合った、シリーズ中でも異色の傑作です。ミンディ・クラーク(メリンダ・クラーク)の体を張った演技と、スティーヴ・ジョンソンによる衝撃的な特殊メイク、そしてブライアン・ユズナ監督の骨太な演出が見事に融合した本作は、ゾンビ映画ファンのみならずロマンティック・ホラーやカルト映画がお好きな方にも強くおすすめしたい一作です。
日本では劇場未公開でしたが、現在はBlu-ray(アンレイテッド版を収録したVestronコレクターズ・エディション)のほか、各種動画配信サービスでも鑑賞可能です。前作「バタリアン」「バタリアン2」とはまったく異なる味わいを持つ本作を、ぜひご覧になってみてください。
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