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1985年に公開されたアメリカ映画『バタリアン』(原題:The Return of the Living Dead)は、「ゾンビが脳みそを食べる」という現代ゾンビ映画の定番設定を確立した、ホラーコメディ映画の金字塔です。監督・脚本は、映画『エイリアン』(1979年)の原案・脚本で知られる鬼才ダン・オバノンの長編監督デビュー作でもあります。ジョージ・A・ロメロの名作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年)との複雑な関係を持ちながら独自の路線を突き進んだ本作は、走るゾンビ・不死のゾンビ・脳を求めて叫ぶゾンビといった革新的な設定でホラー映画史を塗り替えました。日本では「オバタリアン」という流行語を生み出したことでも知られています。本記事では作品概要・原作との関係・あらすじ・キャスト・制作背景・評価まで、公的情報をもとに詳しく解説いたします。
作品概要:基本情報
『バタリアン』(原題:The Return of the Living Dead)は、1985年にアメリカで製作・公開されたホラーコメディ映画です。日本での邦題「バタリアン」は日本の配給会社・東宝東和が付けたもので、英語題「Battalion(軍団)」を経由した名称です。
監督・脚本はダン・オバノン、原案はルディ・リッチ、ジョン・ルッソ、ラッセル・スタイナー、製作はトム・フォックス、共同製作はグレアム・ヘンダーソン、撮影はジュールス・ブレンナー、編集はロバート・ゴードン、音楽はマット・クリフォードらが担当しています。製作会社はヘムデール・フィルム・コーポレーション、フォックス・フィルムズほか、アメリカでの配給はオライオン・ピクチャーズです。アメリカでの公開日は1985年8月16日で、日本では東宝東和配給のもと1986年2月1日に劇場公開されました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 邦題 | バタリアン |
| 原題 | The Return of the Living Dead |
| 製作年 | 1985年 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督・脚本 | ダン・オバノン |
| 撮影 | ジュールス・ブレンナー |
| 音楽 | マット・クリフォード |
| 製作費 | 約300〜400万ドル |
| 上映時間 | 91分 |
| 配給(日本) | 東宝東和 |
| 米国公開 | 1985年8月16日 |
| 日本公開 | 1986年2月1日 |
| 米国興行収入 | 約1,423万ドル |
原案の背景:ロメロとルッソの分裂から生まれた作品
本作を理解する上で欠かせないのが、ジョージ・A・ロメロの名作『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968年)との複雑な関係です。
1968年の『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は、ジョージ・A・ロメロとジョン・ルッソが共同で手がけた作品です。その後、2人はゾンビ映画の続編方向性について意見が対立し、別々の道を歩むことになりました。ロメロは自身のゾンビ宇宙を独自に発展させ(『ゾンビ』1978年、『死霊のえじき』1985年など)、一方のルッソはルディ・リッチ、ラッセル・スタイナーとともに「Return of the Living Dead」というタイトルの使用権を保持し、独自の路線で続編を制作する権利を持ちました。
このルッソらの原案をもとに、ダン・オバノンが大幅に書き直し・独自の世界観を加えて脚本に仕上げたのが本作です。劇中で「『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』は実際に起きた事件を映画化したものだ」というメタフィクション的な設定が盛り込まれており、ホラーファンへのウィンクが随所に散りばめられています。
あらすじ:医療用倉庫から始まるゾンビパニック
ケンタッキー州ルイビル。医療用品の倉庫で働くベテラン従業員のフランク(ジェームズ・カレン)は、新入り社員のフレディ(トム・マシューズ)に倉庫の秘密を見せようとします。それは地下室に保管された、アメリカ軍が誤って送りつけてきた密封ドラムの数々でした。ドラムの中には「245トライオキシン」という化学物質に汚染されたゾンビが封じ込められており、軍から倉庫に預けられたまま放置されていたのです。
不幸にもドラムに亀裂が入り、有毒ガスが漏れ出してしまいます。ガスは倉庫内の動物の標本を次々と蘇らせ、フランクとフレディも気分が悪くなり始めます。倉庫のオーナーでもある社長バート(クルー・ギャラガー)に連絡したフランクは、近所の火葬場で働くアーニー(ドン・カルファ)の助けを借りて事態を収めようとします。
一方、倉庫の駐車場に隣接する墓地では、フレディの恋人ティナ(ベヴァリー・ランドルフ)とその仲間のパンクたちが夜のパーティに興じていました。やがてドラムの漏れ出したガスが雨に混ざって墓地に降り注ぐと、地中に埋められた死体たちが次々と蘇り始めます。「脳みそ!(Braaaains!)」と叫びながら走って襲いかかるゾンビたち。人間の脳を求める死者の軍団に対し、バートたちはいかに立ち向かうのか——。
キャスト紹介:個性豊かな出演陣
クルー・ギャラガー(バート役)
倉庫のオーナーでカリスマ的な存在感を持つバートを演じています。事態の収拾に奔走しながらも次々と想定外の事態に直面する役どころで、本作の中心人物の一人です。
ジェームズ・カレン(フランク役)
フレディに秘密のドラム缶を見せてしまうベテラン従業員フランク役。この失敗が全ての惨劇の引き金となります。
トム・マシューズ(フレディ役)
フランクの新入り部下。フレディがたどる過酷な運命が物語の大きな柱となっています。
ドン・カルファ(アーニー役)
バートの友人で近所の火葬場を経営する人物を演じています。
ベヴァリー・ランドルフ(ティナ役)
フレディの恋人で、ゾンビパニックの中でフレディを必死に探し求めるヒロイン。
リネア・クィグリー(トラッシュ役)
本作でカルト的な人気を得たのがリネア・クィグリー演じる「トラッシュ」で、スクリーム・クイーンとしての評価を確立した役どころです。
アラン・トラウトマン(タールマン役)
本作で最も人気を誇るゾンビキャラクターが「タールマン(Tar Man)」です。ドラムの中から這い出す、タールにまみれた不気味なゾンビをアラン・トラウトマンが演じており、そのビジュアルとトレードマークとなった「Braaaains!(ぶれいんず!)」という台詞は映画史に刻まれています。
このほか、ジュエル・シェパード、ミゲル・A・ニュニェス・Jr.、ブライアン・ペック、マーク・ヴェンチュリーニ、ジョン・フィルビンらが個性的なパンク仲間たちを演じています。
制作背景:ダン・オバノン監督デビューとゾンビ映画の革命
本作の制作にはいくつかの特筆すべき背景があります。
監督のダン・オバノンは、リドリー・スコット監督の映画『エイリアン』(1979年)の原案・脚本家として知られ、また映画『ダーク・スター』(1974年)の共同脚本・特殊効果でも知られる人物ですが、本作が初めての長編映画監督作品となりました。
本作がホラー映画史において革新的だった点は複数あります。まずゾンビが「走る」こと——従来のゾンビ映画では足を引きずってゆっくり歩くゾンビが主流でしたが、本作のゾンビは素早く走って人間に迫ります。次に「ゾンビが脳みそを食べる」という設定——それまでの映画では「ゾンビは人間の肉を食べる」という設定でしたが、本作で「脳みそ」への欲求が明示されたことで、この設定は後の無数のゾンビ映画・ゲーム・漫画に受け継がれていきます。さらに「ゾンビは不死である」という設定——頭を撃っても死なないゾンビは本作の大きな特徴で、恐怖を一層高める要素となっています。
サウンドトラックにはデスロック・パンクバンドを中心とした楽曲が多数使用されており、45グレイヴ(45 Grave)の「Party Time」など、映画の世界観と完璧にマッチした楽曲が揃っています。
なお、日本では本作がヒットしたことで「バタリアン」が「おばさんが集団で突進してくる様子」を表す俗語「オバタリアン」の語源のひとつとなりました(諸説あり)。
興行成績と評価
製作費約300〜400万ドルに対し、アメリカ国内の興行収入は約1,423万ドルを記録しました。批評面でも概ね好評で、ホラーとコメディの融合に成功した快作として高く評価されています。
本作はカルト映画として強固な地位を確立し、続編も複数制作されました(『バタリアン2』(1988年)、『バタリアン3』(1993年)、その後さらに続編が制作されています)。また2025年には本作公開40周年を記念した4KデジタルリマスターDCPによる上映会が各地で行われており、今もなお映画ファンに愛され続けていることがうかがえます。
まとめ:現代ゾンビ映画の常識を作り上げた革命的ホラーコメディ
『バタリアン』は、「走るゾンビ」「脳みそを求めるゾンビ」「不死のゾンビ」という現代ゾンビ映画・ゾンビゲームの常識を確立した革命的作品です。ホラーとしての恐怖、コメディとしての笑い、そしてパンクロックを前面に出したポップなビジュアルが見事に融合した本作は、1980年代ホラー映画の中でも特に輝きを放つ一本として今日も語り継がれています。
タールマンをはじめとする個性的なゾンビたち、主人公たちのドタバタ劇、そして衝撃的なラストまで、初見の方にも楽しめる内容が詰まっています。ゾンビ映画・ホラーコメディがお好きな方、80年代映画を深く掘り下げたい方には特におすすめの一作です。現在はBlu-rayのほか、各種動画配信サービスでも鑑賞可能です。
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