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『ゲド戦記』(ゲドせんき、英題:Tales from Earthsea)は、アーシュラ・K・ル=グウィンの小説『ゲド戦記』の主に第3巻の「さいはての島へ」を原作とし、また宮崎駿の絵物語『シュナの旅』も原案としたスタジオジブリ制作の日本のアニメーション映画。東宝配給で2006年7月29日に劇場公開。…
60キロバイト (7,363 語) – 2025年10月8日 (水) 11:03
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1. ジブリと『ゲド戦記』の結びつき
この映画は、アーシュラ・K・ル=グウィンの小説『ゲド戦記』の第3巻「さいはての島へ」を主な原作とし、宮崎駿さんの絵物語『シュナの旅』を原案として制作されました。
宮崎吾朗監督により独自の解釈が加えられたストーリーとなっています。
映画の製作背景には、宮崎駿さんの影響が色濃く反映されています。
彼は『風の谷のナウシカ』の制作以前から『ゲド戦記』の映画化を考えており、数回にわたり原作者のル=グウィンにアプローチしましたが、映画化の許可はなかなか得られませんでした。
しかし、彼女が宮崎駿さんの作品に好意を持っていたこともあり、ようやく映画化への道が開かれました。
スタッフの一人には、宮崎駿さんの息子である宮崎吾朗さんもいました。
当初、彼が監督に選ばれた時はジブリの内部で多くの異論がありましたが、彼の頑張りと新しい発想によって、チームはひとつにまとまり、結果的に映画の完成へと導かれました。
宮崎吾朗さんは父親の影響を受けつつも、『ゲド戦記』の独自の世界を表現することに成功しました。
映画の公開後、いくつかの批判がありました。
特に、映画のストーリーが原作と異なる点や、挿入歌『テルーの唄』についての著作権問題が持ち上がりました。
これに対して、製作側は反省し、聞き手への説明責任を果たす努力も行っています。
映画『ゲド戦記』は、ジブリ作品としての独自性を持ちながらも、宮崎親子の確執や、制作チームの葛藤と挑戦を描いた作品とも言えます。
その影響は現在もなお、多くの映画ファンやジブリファンに受け継がれています。
2. 宮崎親子の葛藤
その中でも特に注目を集めたのが、宮崎駿氏とその息子である吾朗監督との間に生じた対立です。
この映画の制作過程では、父親である宮崎駿氏が吾朗監督の起用に反発する姿がありました。
駿氏は当初、吾朗氏が映画監督を務めることに納得がいかず、その制作能力に懐疑的でした。
しかし、吾朗監督はその批判に立ち向かい、自身の作品作りのスタイルを貫きました。
この親子の対立は、単なる意見の相違に留まらず、それぞれの作品に対する思い入れと解釈の違いでもありました。
駿氏は自分の作品に対する深い思い入れから、吾朗監督の解釈に対して厳しい言葉を投げかけることがしばしばあり、これが親子間の距離感を生む一因となったのです。
それでも、吾朗監督は自身のスタイルを確立し続け、映画『ゲド戦記』を完成させるために努力を重ねました。
このような親子の葛藤は、映画制作の舞台裏に隠された興味深い物語を生んでいます。
3. 挿入歌『テルーの唄』の評価
多くの方がこの楽曲の美しさに魅了された一方で、歌詞が萩原朔太郎さんの詩『こころ』に似ているという指摘が出たのです。
これに対し、一部の評論家は盗作ではないが、モラルの観点から萩原への謝辞が必要だと主張しました。
これにより、映画のプロデューサーである鈴木敏夫さんは、表記が不十分だったとして謝罪を行いました。
さらに、映画公開当時のスタッフロールには『こころ』に触れていなかった問題を受け、DVDおよびVHSの販売時に追記を行うこととなりました。
この問題は、著作権法的には解決されているものの、映画の評価やジブリ作品への信頼感に微妙な影響を与えました。
しかし、挿入歌『テルーの唄』はその後も多くの人々に愛され続けており、この問題を乗り越えた新たな評価を得ています。
4.『ゲド戦記』の国際的評価
2006年の第63回ヴェネツィア国際映画祭で特別招待作品として上映されましたが、評価は最低ランクに留まり、スタジオジブリの国際的な評価を下げる結果となりました。ヴェネツィアではそのストーリーの平板さや、創造性に欠けると評価されました。ジブリの過去作品に比べて、特色に乏しいとの指摘が多かったです。
北米では、先行して『ゲド戦記』のテレビドラマ化が進行していたため、劇場公開は困難でした。しかし、2010年にニューヨークとロサンゼルスで限定的に上映されました。原作者のル=グウィン氏は、映画を吾朗さんの作品として認めつつも、自身の小説とは異なるとする意向を示しています。彼女は映画の美しさを認めながらも、物語の説得力の欠如について批判的でした。
5. 最後に
本作は、宮崎駿さんの『シュナの旅』に強く影響を受けた独特な解釈が加わっています。アーシュラ・K・ル=グウィンの原作とは異なるアプローチで描かれたことで、観客や批評家からは賛否が分かれました。特に、原作への敬意を反映する一方で、新しい視点を提供しようとした姿勢が見受けられます。
公開当初、観客動員は良好で、興行成績も邦画の中でトップを争うものでしたが、国際的な評価は賛否が分かれました。ヴェネツィア国際映画祭への出品時には、ジブリ作品としての評価を下げる要因となったとも言われています。一方で、日本国内では多くの批評家が厳しい評価を下しており、制作過程や挿入歌への批判も影響を与えました。
宮崎吾朗監督作品としての評価においては、彼の初監督作として挑戦的な側面が注目されます。特に、アニメーション業界への新しい風を送り込むという意図も見て取れます。親子の確執が話題となった一方で、彼の映画製作に対する真摯な姿勢は、次々と新たな作品に影響を与えていくことが期待されています。最後に、作品に対する批評の概要としては、その斬新さと未熟さが両立する評価が多く、今後の彼の作品に対する期待も高まっています。
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