【タールマン完全解説】バタリアンシリーズが生んだ伝説のゾンビキャラクターを第1作・第2作・第5作で徹底解剖

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※記事内の画像は全てイメージです。実際の製品・写真とは異なります。

「バタリアン(The Return of the Living Dead)」シリーズに登場するゾンビキャラクターの中で、最も広く愛され、ゾンビ映画史においても特別な地位を占めるのが「タールマン(Tarman)」です。1985年の第1作で初登場したタールマンは、全身が黒いタール状の溶けた組織に覆われた異形の姿と、「Braaaains!(ブレインズ!)」という台詞によって映画史に刻まれた、唯一無二のゾンビキャラクターです。本記事では第1作(1985年)・第2作(1988年)・第5作(2005年)の3作品へのタールマンの登場を詳しく解説するとともに、その誕生の裏側にある制作秘話や、演じたアラン・トラウトマンの経歴まで、公的情報をもとに徹底解説いたします。


タールマンとはどんなキャラクターか

タールマンは「バタリアン」シリーズに登場するゾンビキャラクターです。「タールマン」という名前自体は劇中で登場人物の1人「スパイダー」がその外見を見て咄嗟に呼んだことに由来しており、全身の腐敗した筋肉組織が溶けて黒くタール状に変化した外見から名付けられた通称です。

シリーズ内の設定によれば、タールマンは1960年代に軍の研究施設(退役軍人病院の地下の霊安室)でトライオキシンガスの漏洩事故によって最初に蘇生した死体であるとされています。その後なんとかアメリカ軍が事態を収拾し、タールマンはトライオキシンガスとともに密封されたドラム缶に封じ込められました。ドラム缶の中で長期間保存されたことでさらに乾燥が進み、ほぼミイラ化に近い状態となっていました。

タールマンが映画史においてとりわけ重要な存在とされるのは、ゾンビが「脳みそ(ブレインズ)」を求めて叫ぶという設定を最初に映画に登場させたキャラクターだからです。以降、この設定は無数のゾンビ映画・ゲーム・漫画・アニメ作品に受け継がれ、「ゾンビ=脳みそを食べる」という現代の大衆文化に定着したイメージの原点となっています。


第1作(1985年):タールマンの誕生と伝説の「Braaaains!」

登場と設定

第1作『バタリアン』(原題:The Return of the Living Dead、1985年)において、タールマンは物語の中盤ではじめて姿を現します。医療用品倉庫の地下に保管されていた軍のドラム缶が破損し、中に封じ込められていたタールマンが解放されます。当初は倉庫の暗がりに身を潜めていますが、やがて生き残りの人間たちの前に姿を現し、「Live brains!(生きた脳みそを!)」「More BRAINS!(もっと脳みそを!)」と叫びながら人間を追い回します。

ビジュアルの誕生秘話:制作会社の倒産から生まれた傑作

タールマンのビジュアル誕生には、制作上の混乱という複雑な事情がありました。

撮影の2週間前、特殊効果を請け負っていた制作会社が突然倒産してしまいます。この危機的状況の中、プロダクションデザイナーのウィリアム・スタウトが数多くの水彩スケッチを描いてイメージを保ち、急遽ケニー・マイヤーズとトニー・ガードナーの2人が特殊効果を引き継ぎました。さらにビル・マンズが特殊メイク担当として関わっていましたが、後に品質の問題から製作途中で降板することになります。

タールマンのコンセプト自体は、監督ダン・オバノンが愛読していたECコミックスの画家グハストリー・グレアム・イングルズが描いたゾンビ——「体の各部位がたるんだように垂れ下がり、黒いぼろぼろの組織が引っかかっている」というビジュアル——からインスピレーションを得たものです。

ケニー・マイヤーズはスタウトのスケッチに忠実なタールマンの最終デザインを完成させるにあたり、まず目のデザインを一新しました。初期の目の部分は単に塗装したピンポン球でしたが、マイヤーズはより深みのある瞳に新たなレンズを加え、さらにエポキシ樹脂でコーティングすることで生気のある光沢感を実現しました。スーツは裁縫師を雇って完全に作り直され、その上からメチルセルロース(乳製品等の増粘剤として使われる食品添加物)で覆うことで、あの印象的なぬめりとしたタール状の質感が生み出されています。

演じたアラン・トラウトマン:俳優・パペティアとしての経歴

タールマンを主に演じたのは俳優・パペティアのアラン・トラウトマンです。大学在学中からパペット操作に親しんでいたトラウトマンは、コロラドシェイクスピアフェスティバルでの舞台活動を経てロサンゼルスへ移り、シド・アンド・マーティ・クロフトの番組などでパペット操作を手がけていました。

タールマン役にトラウトマンが選ばれた大きな理由は、彼が持つ俳優・パペティアとしての類稀な身体能力にあります。トラウトマンは骨格がつながっていないかのように脱力した独特のぎこちない動きを体現でき、これがドラム缶の中から這い出すタールマンの動きに見事にマッチしました。スタウトのスケッチが持つ「よじれた」感覚を肉体で表現できるのはトラウトマンだったというわけです。

また、タールマンのアップで脳みそにかぶりつくシーンはアラン・トラウトマン本人ではなく、特殊メイクのケニー・マイヤーズ自身の手がパペットとして操作して撮影されています。さらに、タールマンが頭部を叩き切られるシーン(ハイライトシーンのひとつ)については、トラウトマンが切断部分の直前まで演じ、その後は別の俳優ロバート・J・ベネットがスーツを引き継いで頭部が取れるシーンを演じています。

名台詞「Braaaains!」の意義

タールマンが発した「Braaaains!」というひと言は、ゾンビ映画・ゾンビカルチャーの歴史において最も重要な一言のひとつです。

それ以前のジョージ・A・ロメロのゾンビ映画では、ゾンビが「脳みそ」を特別に欲しがるという設定は存在しませんでした。ロメロのゾンビは人間の肉を無差別に食べる存在でした。タールマンが「脳みそ!生きた脳みそを!」と明確に言語化したことで、「ゾンビ=脳みそを食べる生き物」という現代の大衆文化における定番のイメージが確立されました。

また注目すべきは、タールマンが言葉を発するという点です。それまでのゾンビは言語能力を持たない設定が一般的でしたが、タールマンは意思を持って「脳みそ」と要求する知性的な面も持っており、これがホラーとしての恐怖とコメディとしての滑稽さの両立を可能にしています。


第2作(1988年):バタリアン2に登場するタールマン

第2作『バタリアン2』(原題:Return of the Living Dead Part II、1988年)にも、アラン・トラウトマンが再びタールマンを演じて登場しています。

第2作のタールマンは第1作のタールマンの直接の続きではなく、同じシリーズの世界観を共有する別の個体という解釈のもとで登場しています。外見は第1作と同様に黒くタール状の溶けた筋肉組織に覆われており、視覚的に第1作のキャラクターを継承しています。

しかし第2作では、タールマンはさほど大きな脅威としては描かれず、コメディ的なシーンにおける存在感が前作より強くなっています。第2作は全体的に前作よりも家族向けのコメディ色が強い路線となっており、タールマンの扱いにもその方向性が反映されています。


第5作(2005年):バタリアン5——20年ぶりの復活

第1作から実に20年の時を経て、タールマンは第5作『バタリアン5』(原題:Return of the Living Dead: Rave to the Grave、2005年)に再び姿を現しました。アラン・トラウトマンが三度タールマンを演じており、クレジット上はノンクレジット扱いとなっています。

第5作でのタールマンは、コミカルな脇役として機能しています。ハロウィンのパーティに向かおうとするも、ヒッチハイクを試みた際に相乗りしようとした女性ドライバーに怖がられて失敗し、しかたなく「Braaaains!」と叫びながら歩いてパーティ会場へ向かうというラストシーンが用意されています。シリーズファンへのサービスと笑いを兼ねたこのシーンは、第5作のなかでも特に語り継がれる場面となっています。


アラン・トラウトマンのその後のキャリア

タールマンを演じたアラン・トラウトマンは、その後もパペティア・俳優としての活動を続けています。1990年からはジム・ヘンソン・カンパニーのマペット作品に携わり始め、ディズニーテーマパークで現在も上映されている「マペット・ビジョン3D」(1991年)を皮切りに、「マペッツ・フロム・スペース」(1999年)など多くのマペット作品に参加しています。また映画『ハッピータイム・マーデーズ』(2018年)にも出演するなど、パペットと俳優の両分野で活躍し続けており、タールマン役とマペット関連作品という対照的な代表作を持つユニークなキャリアを歩んでいます。


まとめ:ゾンビ文化の歴史を変えたキャラクターの全貌

タールマンは「バタリアン」シリーズという1本の映画から生まれながら、「ゾンビが脳みそを求める」という現代ゾンビ文化の常識を作り上げた、ホラー映画史において特別な意義を持つキャラクターです。プロダクションデザイナーのウィリアム・スタウトのスケッチ、特殊メイクのケニー・マイヤーズの技術、そしてアラン・トラウトマンの比類なき身体表現が三位一体となって生まれたそのビジュアルは、1985年から40年が経った現在もなお色あせることなく、多くのホラーファンを魅了し続けています。第1作・第2作・第5作を通じた「タールマン」というキャラクターの歩みを知ることは、「バタリアン」シリーズをより深く楽しむ上での大きな手助けとなることでしょう。