映画『ゴリラ』(1986)徹底解説:シュワルツェネッガーが挑んだ潜入捜査と復讐の美学

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1980年代、ハリウッドでは肉体派アクションスターたちが激しい火花を散らしていました。その中心にいたのが、アーノルド・シュワルツェネッガーとシルヴェスター・スタローンです。

1985年の『コマンドー』で無敵の肉体派ヒーローとしての地位を不動のものにしたシュワルツェネッガーが、翌1986年に放った意欲作が『ゴリラ』(原題: Raw Deal)です。

本作は、単なる筋肉アクションに留まらず、シュワルツェネッガーが「マフィアへの潜入捜査」というハードボイルドな役どころに挑戦した異色作でもあります。今回は、この伝説のアクション映画をあらすじ、キャスト、製作秘話、そして当時のライバル関係まで徹底的に深掘り解説します。

1. 作品概要:『コマンドー』の次に選ばれた「ハードボイルド」

  • 公開年:1986年(日本公開は1986年11月)
  • 原題:Raw Deal(直訳すると「不当な扱い」「過酷な仕打ち」)
  • 監督:ジョン・アーヴィン
  • 主演:アーノルド・シュワルツェネッガー
  • 製作:ディノ・デ・ラウレンティス

本作の原題『Raw Deal』は、法や組織から不当な扱いを受けた男の物語であることを示唆しています。前作『コマンドー』があまりにも超人的なアクションに特化していたため、本作では少し現実味のある「クライム・サスペンス」の要素が取り入れられました。

監督のジョン・アーヴィンは、戦争映画の傑作『ハンバーガー・ヒル』などで知られる実力派。シュワルツェネッガーの「無敵感」を活かしつつも、シカゴの裏社会を舞台にした泥臭い復讐劇を演出しました。


2. あらすじ:組織を壊滅させるための「死の偽装」と潜入

物語の主人公は、元FBI捜査官のマーク・カミンスキー(シュワルツェネッガー)。彼は有能な捜査官でしたが、容疑者に対して過剰な暴力を振るったとして解雇され、現在は田舎町で細々と保安官として暮らしています。

都会暮らしを懐かしみ、アルコールに溺れる妻との生活に、カミンスキーはどこか虚しさを感じていました。そんなある日、かつての恩師でありFBI幹部のハリー・シャノンから、極秘の依頼が舞い込みます。

恩師の息子への復讐

ハリーの息子はFBIの証人保護プログラムに従事していましたが、組織内の「ネズミ(裏切り者)」による情報漏洩によって、マフィアに惨殺されてしまったのです。法の手で裁けない巨悪に対し、ハリーはカミンスキーにこう告げます。 「組織に潜入し、奴らを内側から引き裂いてくれ。成功すればFBIへの復職を約束する」

カミンスキーから「ジョセフ・P・ブレナー」へ

カミンスキーは自らの死を偽装するため、石油コンビナートを爆破するという(シュワちゃんらしい)派手な演出で世間から姿を消します。そして、別人になりすましてシカゴの暗黒街へと足を踏み入れます。

彼は、シカゴを支配するパトロヴィータ・ファミリーに接近し、持ち前の剛腕と度胸で次第に組織の信頼を勝ち取っていきます。しかし、組織の冷酷な用心棒マックス・ケラーは、新参者の「ブレナー」に対して疑いの目を向け続け……。


3. 主要キャスト紹介:個性が光る俳優陣

本作を彩るキャストたちは、アクション映画ファンにはたまらない渋いメンツが揃っています。

アーノルド・シュワルツェネッガー(マーク・カミンスキー役)

30代後半、肉体的に最も脂が乗っていた時期のシュワルツェネッガー。本作では、高級スーツに身を包み、葉巻をくゆらす「マフィア風の着こなし」も見どころの一つ。潜入捜査官という複雑な役どころを、彼特有のユーモアと圧倒的な威圧感で演じ分けています。

ダレン・マクギャヴィン(ハリー・シャノン役)

カミンスキーに復讐を依頼する、悲しみに暮れる父親兼FBI幹部。彼の存在が、単なるアクション映画に「情念」という深みを与えています。

サム・ワナメーカー(ルイジ・パトロヴィータ役)

組織のトップとして君臨するドン。品格がありながらも、目的のためには手段を選ばない冷酷な老人を演じています。

ロバート・ダヴィ(マックス・ケラー役)

シュワルツェネッガーの正体を疑う、組織の腕利き。ロバート・ダヴィは後の『007 消されたライセンス』でも悪役を演じるなど、ハリウッドを代表する「悪役のプロ」です。シュワルツェネッガーとのヒリヒリするような心理戦は、本作の隠れた見どころです。


4. 『ゴリラ』の名シーン:バイオレンスとカタルシス

本作には、アクション映画史に残る「これぞシュワルツェネッガー!」というシーンがいくつも存在します。

採石場での大虐殺(クライマックス)

正体が露見したカミンスキーが、重火器を積み込んだ車で敵のアジトである採石場に乗り込むシーンは圧巻です。ローリング・ストーンズの「サティスファクション」をBGMに、ショットガンやマシンガンを乱射し、敵を次々となぎ倒していく姿は、もはや「歩く破壊神」。

この「一人対多人数」の構図は、後のシュワルツェネッガー作品のテンプレートとなりました。

トラクターでのカジノ襲撃

マフィアの経営する地下カジノに、巨大なレッカー車で突っ込むシーンも。物理法則を無視したかのような豪快な破壊演出は、1980年代アクションの真骨頂です。


5. SEO考察:なぜ邦題が『ゴリラ』になったのか?

ここで多くのファンが抱く疑問、「なぜ原題の『Raw Deal』が『ゴリラ』になったのか?」という点について触れます。この「邦題の謎」は非常に検索ボリュームが多いトピックです。

1986年当時、シュワルツェネッガー=「圧倒的なパワーを持つ男」というイメージを日本の配給会社が強調したかったことが最大の理由と言われています。また、同時期にスタローンが『コブラ』という映画を公開していたため、それに対抗して「コブラ対ゴリラ」という強烈な対決構図を煽る狙いがあったともされています。

実際、本作のポスターや宣伝文句は「都会(マチ)のジャングルに、ゴリラが舞い降りた」といった、原題のニュアンスとは大きくかけ離れたワイルドなものでした。しかし、このインパクトがあったからこそ、今でも日本のファンの記憶に強く刻まれているのは間違いありません。


6. 製作舞台裏:シュワルツェネッガーの「ビジネス的選択」

本作が製作された背景には、少し意外なビジネス上の理由がありました。

当時、シュワルツェネッガーは製作会社ディノ・デ・ラウレンティスと複数の作品に出演する契約を結んでいました。実は、彼は早く『トータル・リコール』の製作に取り掛かりたかったのですが、契約上、先に別の作品に出る必要がありました。

そこで、比較的低予算かつスピーディーに製作できるアクション映画として選ばれたのが『ゴリラ』だったのです。ある意味で「義務」として出演した作品ではありましたが、結果として彼のキャリアに「刑事・潜入もの」という新しい色を加えることに成功しました。


7. 当時のライバル:スタローン『コブラ』との激突

1986年は、シュワルツェネッガーにとって最大のライバルであるシルヴェスター・スタローンが『コブラ』を公開した年でもあります。

  • 『コブラ』:はみ出し刑事、派手なカーチェイス、スタイリッシュな映像
  • 『ゴリラ』:潜入捜査官、マフィアとの心理戦、豪快な破壊

興行収入的には『コブラ』に軍配が上がりましたが、アクションの「重厚感」や「満足度」においては『ゴリラ』を推す声も根強いです。この二大スターの競演が、アクション映画というジャンルのレベルを底上げしていたことは言うまでもありません。


8. 再評価:現代の視点で観る『ゴリラ』の魅力

公開から35年以上が経過した今、改めて『ゴリラ』を観返すと、現在の映画にはない「良さ」が際立ちます。

実写スタントと火薬の量

CGが一般的でなかった時代、爆発シーンはすべて本物の火薬を使い、スタントも人間が体を張って演じていました。映像から伝わってくる「熱気」と「衝撃波」のリアリティは、現代のデジタル映像では再現できないものです。

ストレートな勧善懲悪

複雑な伏線やどんでん返しも良いですが、「悪い奴らを筋肉と銃火器で一掃する」というシンプルさは、最高のストレス解消になります。本作はまさに、その究極形です。


9. まとめ:シュワルツェネッガー伝説の一翼を担う傑作

『ゴリラ』は、シュワルツェネッガーの輝かしいキャリアの中で、時として『ターミネーター』や『プレデター』の影に隠れがちです。しかし、そこには「シュワルツェネッガーというアイコン」が完成していく過程の、荒々しくも魅力的な姿が凝縮されています。

  • 潜入捜査というスリリングな設定
  • 80年代アクションの極致とも言える破壊描写
  • 渋い脇役たちが支えるハードボイルドな世界観

もし、あなたがまだ「邦題のせいでB級映画だと思っている」のであれば、それは大きな損失です。今こそ、U-NEXTやAmazon Prime Videoなどの配信サービスで、この「鋼鉄の男」の戦いを目に焼き付けてください。

ジャングルの掟は、いつだって力が支配する。そして、そのジャングルの頂点に立つのは、やはりアーノルド・シュワルツェネッガーなのです。