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1995年に公開されたアメリカ映画『暗殺者』(原題:Assassins)は、シルヴェスター・スタローンとアントニオ・バンデラスが新旧の天才ヒットマンとして激突するアクション・スリラー映画です。監督は「リーサル・ウェポン」シリーズで知られるリチャード・ドナー、製作はドナーと『ダイ・ハード』のジョエル・シルヴァーが共同で担当。ジュリアン・ムーアが謎のハッカーとして共演しています。さらに本作の脚本を手がけたのは、後に『マトリックス』で映画史を塗り替えることになるウォシャウスキー姉妹(当時はウォシャウスキー兄弟として活動)で、その脚本が大幅に書き直されたことでクレジット問題に発展したという制作秘話も有名です。製作費約5,000万ドルに対し全世界で約8,330万ドルを記録した本作の全貌を、公的情報をもとに詳しく解説いたします。
作品概要:基本情報
『暗殺者』(原題:Assassins)は、1995年に製作・公開されたアメリカのアクション・スリラー映画です。
監督はリチャード・ドナー、脚本はウォシャウスキーズ(ラナ・ウォシャウスキー、リリー・ウォシャウスキー、当時はラリー・ウォシャウスキー、アンディ・ウォシャウスキーとして活動)とブライアン・ヘルゲランドが担当。撮影は『クローサー』などで知られる名手ヴィルモス・ジグモンド、編集はリチャード・マークスとローレンス・ジョーダン、音楽はマーク・マンシーナが手がけています。製作はリチャード・ドナー、ジョエル・シルヴァー、ブルース・エヴァンス、レイノルド・ギデオン、アンドリュー・ラザー、ジム・ヴァン・ウィックが担当。配給はワーナー・ブラザースで、北米公開は1995年10月6日、日本公開は1996年2月3日です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 原題 | Assassins |
| 製作年 | 1995年 |
| 製作国 | アメリカ |
| 監督 | リチャード・ドナー |
| 脚本 | ウォシャウスキーズ、ブライアン・ヘルゲランド |
| 音楽 | マーク・マンシーナ |
| 撮影 | ヴィルモス・ジグモンド |
| 製作費 | 約5,000万ドル |
| 上映時間 | 133分 |
| 配給 | ワーナー・ブラザース |
| 北米公開 | 1995年10月6日 |
| 日本公開 | 1996年2月3日 |
| 全世界興行収入 | 約8,330万ドル |
あらすじ:引退を望む老ヒットマンと野心家の若き刺客
ロバート・ラス(シルヴェスター・スタローン)は長年にわたり暗殺業界のトップに君臨してきたプロのヒットマンです。しかし冷戦が終わり「暗殺もただのビジネス」と化した現代において、業界に残されていた仁義や掟は廃れ、ラスは引退を心に決めていました。ラスを長年悩ませているのは数年前に自分が師匠ニコライを手にかけたという記憶でした。
そんなラスのもとに新たな依頼が届きます。汚職政治家ブランチの暗殺依頼でしたが、実行当日、ブランチは別の人物に先に殺されてしまいます。その人物こそ、ミゲル・ベイン(アントニオ・バンデラス)という名の若き暗殺者でした。ベインは野心的かつ狂気的な性格の持ち主で、ラスを消してヒットマン業界のナンバーワンになることを目標としていました。
やがて謎の依頼人「ザ・コントラクター」からラスに新たな仕事が舞い込みます。それは、ある機密データのディスクを持つハッカー「エレクトラ」(ジュリアン・ムーア)と、そのディスクを買おうとしているバイヤー4人を始末し、ディスクを奪うというものでした。猫と暮らしながら電子機器を自在に操るエレクトラに接触を試みたラスは、彼女をベインの危険から守ることを選びます。しかしベインはあらゆる場所でラスの先手を打ち続け、三つ巴の死闘はクライマックスへと向かっていきます。
キャスト紹介
シルヴェスター・スタローン(ロバート・ラス役)
引退を望むベテランヒットマンを演じています。これまでのアクション映画における「無敵のヒーロー」とは異なり、疲弊した内省的な人物を体現した役柄です。日本語吹替は玄田哲章さんが担当しています。
アントニオ・バンデラス(ミゲル・ベイン役)
本作のもう一人の主役であり、ラスを脅かす野心的な若手ヒットマンを演じています。スペイン出身の俳優で、同年公開のロバート・ロドリゲス監督『デスペラード』でも強烈な印象を残しており、本作でも狂気と魅力を兼ね備えたキャラクターを全身で表現しています。日本語吹替は大塚明夫さんが担当しています。
ジュリアン・ムーア(エレクトラ役)
謎のハッカーで、ラスとベイン双方に狙われる女性を演じています。愛猫を溺愛する個性的なキャラクターで、複雑な状況の中で自分なりの信念で行動します。後にアカデミー賞主演女優賞を受賞する実力派女優の初期主要作のひとつです。日本語吹替は土井美加さんが担当しています。
アナトリー・ダヴィドフ(ニコライ役)
ラスがかつて手にかけた師匠ニコライを演じています。過去と現在を往来する回想シーンで重要な役割を担います。
制作背景:ウォシャウスキーズの幻の脚本と『マトリックス』への道
本作の制作背景には、映画史的にも注目すべき重要なエピソードがあります。
本作のオリジナル脚本はウォシャウスキーズ(当時ラリー&アンディ・ウォシャウスキーとして活動)が執筆したスペック・スクリプト(売り込み用脚本)です。この脚本は100万ドルでプロデューサーのジョエル・シルヴァーに売却されました。注目すべきことに、シルヴァーはほぼ同時期にウォシャウスキーズのもうひとつの脚本も100万ドルで購入していますが、それが後の『マトリックス』(1999年)の脚本だったとされています。
ジョエル・シルヴァーはリチャード・ドナー監督に1,000万ドルのギャランティを提示して本作への参加を依頼しました。しかしドナー監督は脚本の暴力描写を抑え、主人公ラスをより同情できる人物にするよう改稿を求め、『L.A.コンフィデンシャル』の脚本で知られるブライアン・ヘルゲランドを起用して最初から書き直す「ページ・ワン・リライト」を行いました。
ウォシャウスキーズは自分たちの脚本が「完全に書き直された」と主張し、クレジットから名前を外すよう求めましたが、全米脚本家組合(WGA)がこれを認めず、最終的にウォシャウスキーズとヘルゲランドの連名でクレジットされることになりました。この経験についてウォシャウスキーズは後年のインタビューで「脚本家としてこの業界では生き残れない。監督になるべきだ」という決意を固めるきっかけになったと語っています。翌1996年の監督デビュー作『バウンド』、そして1999年の『マトリックス』という流れを考えると、本作はウォシャウスキーズの監督キャリア誕生に間接的に貢献した作品ともいえます。
撮影を担当したヴィルモス・ジグモンドはハンガリー出身のアカデミー賞撮影賞受賞者で、『天国の門』などの作品で知られる名手です。音楽のマーク・マンシーナは同年公開の『バッドボーイズ』(1995年)も手がけており、本作でもスリリングなスコアを提供しています。
興行成績と評価
製作費約5,000万ドルに対し、全世界興行収入は約8,330万ドルを記録し、かろうじて製作費を上回る結果となりました。
批評面ではリチャード・ドナーによる脚本改訂で暴力描写が和らいだことやストーリーのテンポについて厳しい意見が多く、批評家の評価は低調でした。一方でスタローンとバンデラスの対比、そして133分という長尺の中で丁寧に描かれる二人の心理的な駆け引きについては一定の評価もありました。
まとめ:マトリックス前夜のウォシャウスキーズ脚本と新旧スターの対決
『暗殺者』は、スタローン対バンデラスというアクション映画史上でも印象的な新旧対決を軸としながら、その裏に『マトリックス』誕生につながるウォシャウスキーズの脚本クレジット問題という映画史的エピソードを秘めた、重層的な作品です。リチャード・ドナー監督の丁寧な演出と、ヴィルモス・ジグモンドの重厚な映像、マーク・マンシーナの緊迫したスコアが本作を支えています。
アクション映画ファンはもちろん、映画制作の裏側や脚本家の歴史に関心をお持ちの方にも興味深い一作です。現在はDVD・Blu-rayのほか各種動画配信サービスでも鑑賞可能です。
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