【ステート・オブ・グレース(1990)】ショーン・ペン×エド・ハリス×ゲイリー・オールドマン!ニューヨーク・ヘルズキッチンのアイリッシュギャングを描く傑作クライムドラマを徹底解説

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※記事内の画像は全てイメージです。実際の製品・写真とは異なります。

1990年に公開されたアメリカ映画『ステート・オブ・グレース』(原題:State of Grace)は、ショーン・ペン、エド・ハリス、ゲイリー・オールドマン、ロビン・ライト、ジョン・タートゥーロという豪華な実力派キャストが集結した、ネオ・ノワール系クライムドラマの隠れた名作です。監督はU2のコンサートフィルム『魂の叫び』で知られる鬼才フィル・ジョアノー、音楽は巨匠エンニオ・モリコーネ、撮影は『ブレードランナー』のジョーダン・クローネンウェス。ニューヨークの犯罪多発地帯ヘルズキッチンを舞台に、潜入捜査官と幼馴染みのアイリッシュギャングの友情・裏切り・愛を描いた本作は、公開直後に公開されたスコセッシ監督の『グッドフェローズ』という怪物的な傑作に埋もれてしまいましたが、今なおカルト的な評価を保ち続ける一本です。本記事では作品概要・あらすじ・キャスト・制作背景・評価まで、公的情報をもとに詳しく解説いたします。


作品概要:基本情報

『ステート・オブ・グレース』(原題:State of Grace)は、1990年に製作・公開されたアメリカのネオ・ノワール・クライムドラマ映画です。

監督はフィル・ジョアノー、脚本は劇作家デニス・マッキンタイア(プラス劇作家デヴィッド・レイブが実質的に脚本に大きく貢献しましたが、全米脚本家組合の仲裁でクレジットに名前はありません)、製作はネッド・ダウド、ランディ・オストロウ、ロン・ロトルズが担当。撮影はジョーダン・クローネンウェス、編集はクレア・シンプソン、音楽はエンニオ・モリコーネ、プロダクション・デザインはパトリシア・フォン・ブランデンシュタインが手がけています。製作会社はシネハウス、配給はオライオン・ピクチャーズです。米国公開日は1990年9月14日、日本ではオライオン映画=ワーナー・ブラザース配給のもと1991年5月25日に公開されました。

項目内容
原題State of Grace
製作年1990年
製作国アメリカ
監督フィル・ジョアノー
脚本デニス・マッキンタイア
音楽エンニオ・モリコーネ
撮影ジョーダン・クローネンウェス
編集クレア・シンプソン
プロダクション・デザインパトリシア・フォン・ブランデンシュタイン
配給オライオン・ピクチャーズ
日本配給オライオン映画=ワーナー・ブラザース
製作費約700万ドル
上映時間134分
米国公開1990年9月14日
日本公開1991年5月25日
米国興行収入約191万ドル
ロッテン・トマトーズ批評家支持率84%(25件のレビュー)

舞台となった「ウェスティーズ」:実在のアイリッシュギャング

本作の舞台であるニューヨーク・ヘルズキッチン(現在はミッドタウン・ウエストとも呼ばれる地区)は、かつてアイルランド系移民が多く住む犯罪多発地帯として知られていました。脚本家デニス・マッキンタイアが本作の脚本を執筆するにあたり、モデルとしたのは「ウェスティーズ(Westies)」と呼ばれた実在のアイルランド系アメリカ人犯罪組織です。

ウェスティーズは1960〜70年代から1980年代にかけてヘルズキッチンを根城に活動していたギャングで、その残虐性においてニューヨークの他のどの組織よりも恐れられていたと記録されています。後にルドルフ・ジュリアーニが連邦検察官としてこの組織の幹部を壊滅させました。

本作のドラマはこの「ウェスティーズ」の実態にインスパイアされており、アイリッシュギャングの内部事情や組織の衰退、変化していくニューヨークの都市風景を忠実に描き出しています。


あらすじ:潜入捜査官と幼馴染みの友情と裏切り

ニューヨーク市警の潜入捜査官テリー・ヌーナン(ショーン・ペン)は、長年を経て自らが育ったヘルズキッチンに戻ってきます。かつての幼馴染みジャッキー・フラネリー(ゲイリー・オールドマン)と再会したテリーは、ジャッキーの兄フランキー・フラネリー(エド・ハリス)が仕切るアイリッシュギャング組織に加わります。目的は、拡大するフランキーのギャング組織に対する証拠を掴むことでした。

テリーとジャッキーはまるで時間が止まっていたかのように、旧交を深め合います。しかし、ジャッキーの妹であり、かつてテリーが愛していたキャスリーン(ロビン・ライト)との関係が再燃し始めることで、任務は複雑な様相を呈してきます。

一方、フランキーは組織の縄張りをイタリア系マフィアと争うため、冷酷で計算ずくの判断で組織を動かしていきます。テリーはギャングの内部に深く潜り込むにつれ、裏切りと友情の狭間で引き裂かれていきます。やがて事態は予想外の方向へと動き出し、テリーは究極の選択を迫られます。


キャスト紹介:錚々たる実力派が集結

ショーン・ペン(テリー・ヌーナン役)

本作の主人公で、ヘルズキッチンに潜入した捜査官を演じています。複雑な感情を抱えながらも暴力的な世界に身を沈めていく男の内面を、抑制の効いた演技で体現しています。

エド・ハリス(フランキー・フラネリー役)

ジャッキーの兄でアイリッシュギャングのボスを演じています。感情を押し殺した冷酷なカリスマ性で組織を統率する役柄を、静かで圧倒的な存在感で演じています。

ゲイリー・オールドマン(ジャッキー・フラネリー役)

テリーの幼馴染みで、フランキーの弟を演じています。感情的で衝動的、暴力と友情の間で揺れ動くジャッキーを、オールドマンならではの爆発的な演技で体現しています。本役でのオールドマンの演技は本作の評価の中で特に高く評価されており、1990年代の彼のキャリアにおける代表的な役柄のひとつとして語り継がれています。

ロビン・ライト(キャスリーン・フラネリー役)

フランキーとジャッキーの妹で、テリーのかつての恋人を演じています。本作はショーン・ペンとロビン・ライトの実生活での交際・結婚のきっかけとなった共演作としても知られています。

ジョン・タートゥーロ(ニック役)

ギャング組織に関わる人物を演じています。後に数々の映画で個性的な演技を見せることになる演技派俳優です。

バーグレス・メレディス(フィン役)

ヘルズキッチンの老バーを営む人物。長いキャリアを持つベテラン俳優で、本作での出演はそのキャリア後期の重要な仕事のひとつとなりました。

このほか、ジョン・C・ライリーが当時まだ無名の若手俳優として出演しており、後の大物スターの若き日の姿を見ることもできます。


制作背景:3人の監督交代と脚本家の死

本作の制作には、劇的な舞台裏があります。

最初の監督はアイルランド出身のパット・オコナーが予定されていましたが、降板します。次に起用されたのはデニス・ホッパーでしたが、ホッパーは出演依頼と撮影スケジュールが重なり降板します。こうして3番目の監督として白羽の矢が立ったのが、U2のコンサートフィルム『魂の叫び』(原題:Rattle and Hum、1988年)でその才能を示した若手のフィル・ジョアノーでした。また当初フランキー役にはビル・プルマンが予定されていましたが降板し、エド・ハリスが加わりました。

脚本家のデニス・マッキンタイアは、癌を患いながら脚本を書き上げましたが、映画が完成する前の1990年2月1日に他界しました。本作がマッキンタイアにとって唯一の映画脚本作品となりました。

また劇作家のデヴィッド・レイブが最終脚本に実質的に大きく貢献したとされていますが、全米脚本家組合(WGA)の仲裁でクレジットには記載されませんでした。オライオン・ピクチャーズは異例にも配給時にレイブの貢献を公表するという異色の対応を取っています。

スタッフ陣の顔ぶれも圧巻です。撮影のジョーダン・クローネンウェスは『ブレードランナー』(1982年)で世界的評価を確立した撮影監督、編集のクレア・シンプソンは『プラトーン』(1986年)でアカデミー賞編集賞を受賞した編集者、プロダクション・デザインのパトリシア・フォン・ブランデンシュタインはアカデミー賞受賞歴を持つ美術デザイナー、そして音楽の巨匠エンニオ・モリコーネと、各分野のトップクリエイターが集結しています。


公開の不運:『グッドフェローズ』の影に埋もれた傑作

本作が興行的に苦戦した最大の理由として、公開タイミングの不運が挙げられています。本作の米国公開は1990年9月14日でしたが、その5日後の9月19日に、マーティン・スコセッシ監督の『グッドフェローズ』が公開されました。同様にニューヨークの実在のギャングを描いた傑作中の傑作が公開されたことで、本作はほとんど注目されることなく埋もれてしまいました。

さらに、配給元のオライオン・ピクチャーズが1990年代初頭に経営難に陥り事実上の破綻状態となったことで、本作は長らく入手困難なまま一般に流通しにくい状態が続きました。

米国での興行収入は約191万ドルにとどまりましたが、ロッテン・トマトーズでは批評家支持率84%(25件のレビュー)という高い批評的評価を得ており、現在はカルト的な評価が定着しています。


まとめ:埋もれた傑作として再発見が進む90年代クライムドラマの隠れた名品

『ステート・オブ・グレース』は、豪華な顔ぶれのキャスト・スタッフが集結しながら、公開のタイミングとオライオン社の経営危機という不運によって正当な評価を受け損なった、映画史的に惜しまれる一作です。エンニオ・モリコーネの音楽、ジョーダン・クローネンウェスのカメラ、そしてゲイリー・オールドマンの圧巻の演技は、今見ても色あせることのない輝きを持っています。

ショーン・ペンとロビン・ライトの実生活の恋愛のきっかけとなった共演作という側面も、映画ファンにとっての興味深い一点です。1990年のクライムドラマに並ぶ傑作群(『グッドフェローズ』『ミラーズ・クロッシング』『ゴッドファーザーPART3』)とともに鑑賞すれば、本作の独自の魅力がより際立ちます。現在はDVDのほか、各種動画配信サービスでも鑑賞可能です。


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