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1993年に製作されたイギリス・アメリカ合作映画『蜘蛛女』(原題:Romeo Is Bleeding)は、ゲイリー・オールドマンとスウェーデン出身の女優レナ・オリンが主演したネオ・ノワール・クライムスリラーです。監督はピーター・メダック、脚本・製作はヒラリー・ヘンキン。撮影は後にトニー・スコット・リドリー・スコット両監督の専属カメラマンとなるダリウス・ウォルスキー、編集は『地獄の黙示録』の伝説的編集者ウォルター・マーチが担当するという豪華なスタッフ布陣で製作されました。マフィアに内通する悪徳刑事が、冷酷無比なロシア人女性殺し屋の魅力に囚われ奈落へと転落していく姿を描いた本作は、公開当初は興行的に苦戦しましたが、オールドマンとオリンの怪演が今なお高く評価され、ネオ・ノワール映画の隠れた名作として再評価が続いています。本記事では作品概要・あらすじ・キャスト・制作背景・評価まで、公的情報をもとに詳しく解説いたします。
作品概要:基本情報
『蜘蛛女』(原題:Romeo Is Bleeding)は、1993年に製作されたイギリス・アメリカ合作のネオ・ノワール・クライム映画です。原題「Romeo Is Bleeding(ロミオは血を流す)」は、トム・ウェイツが1978年にリリースしたアルバム「Blue Valentine」に収録された楽曲「Romeo Is Bleeding」のタイトルから取られており、エンドクレジットではトム・ウェイツへの「スペシャル・サンクス」が記されています。なお、楽曲そのものは本作では使用されていません。
監督はピーター・メダック、脚本・製作はヒラリー・ヘンキン、製作はポール・ウェブスター、製作総指揮はティム・ビーヴァン、エリック・フェルナー、撮影はダリウス・ウォルスキー、編集はウォルター・マーチ、音楽はマーク・アイシャムが担当しています。製作会社はポリグラム・フィルムド・エンターテインメント、ワーキング・タイトル・フィルムズ、ヒラリー・ヘンキン・プロダクションズで、米国配給はグラマシー・ピクチャーズです。アメリカ国内では1993年9月のトロント国際映画祭でプレミア上映され、米国での一般公開は1994年2月4日でした。日本ではヘラルド配給のもと1994年5月21日に公開されています。なお2025年1月17日に日本でリバイバル上映が行われました。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 邦題 | 蜘蛛女 |
| 原題 | Romeo Is Bleeding |
| 製作年 | 1993年 |
| 製作国 | イギリス・アメリカ合作 |
| 監督 | ピーター・メダック |
| 脚本・製作 | ヒラリー・ヘンキン |
| 音楽 | マーク・アイシャム |
| 撮影 | ダリウス・ウォルスキー |
| 編集 | ウォルター・マーチ |
| 製作費 | 約1,000万ドル |
| 上映時間 | 109分 |
| 米国配給 | グラマシー・ピクチャーズ |
| 日本配給 | ヘラルド |
| 米国公開 | 1994年2月4日 |
| 日本公開 | 1994年5月21日 |
| 全世界興行収入 | 約700万ドル |
タイトルの由来:トム・ウェイツの楽曲から
本作の原題「Romeo Is Bleeding」はトム・ウェイツが1978年にリリースしたアルバム「Blue Valentine」収録の同名楽曲から引用されています。TV Tropesをはじめとする複数のソースが確認しているように、本作のエンドクレジットにはトム・ウェイツへの「スペシャル・サンクス」が記されています。なお楽曲そのものは映画内では使用されておらず、あくまでもタイトルのインスピレーション源として引用されているという関係です。
「ロミオは血を流す」という原題は、主人公ジャックが「ロミオ(色男・女たらし)」として同僚から囃されるという劇中の設定と、彼が女性たちと欲望の間で転落し破滅していく様子を重ね合わせた詩的なタイトルとなっています。
あらすじ:欲望に塗れた悪徳刑事の破滅
ニューヨーク市警のジャック・グリマルディ(ゲイリー・オールドマン)は、万年巡査部長でありながら、マフィアのボス・ドン・ファルコーネ(ロイ・シャイダー)への内部情報提供と引き換えに大金を得る腐敗した刑事でした。美しい妻ナタリー(アナベラ・シオラ)と円満に暮らしながら、若い愛人シェリー(ジュリエット・ルイス)まで囲うという贅沢な二重生活を送っていました。
ある日、ジャックはロシア系の凄腕女殺し屋モナ・デマルコフ(レナ・オリン)を逮捕してFBIへの引き渡しを担当することになります。目的のためならどんな手段も選ばない残忍な女であり、ドン・ファルコーネでさえ彼女を恐れていました。いつものようにモナの居場所をマフィアへ売ろうとするジャックでしたが、モナはFBI捜査官をなぎ倒して逃亡してしまいます。
失敗を責めたファルコーネは、ジャックにモナを始末するよう命じます。しかしその矢先、モナが現れてジャックに「自分の死亡証明書を偽造してほしい、報酬はマフィアの5倍を払う」と迫ります。モナの強烈な存在感と魔性の魅力、そして巨額の報酬に抗えなかったジャックは取引に応じます。これが彼の転落の始まりでした。
マフィアとの板挟みになったジャックは足の指を切り落とされ、やがてシェリーと別れ、妻ナタリーも逃がすことになります。しかしモナは常にジャックの一枚上手を行きます。証明書を受け取ったモナはジャックを殺そうとし、やっとの思いで逃れたジャックがモナを射殺すると、それは彼女の巧妙な罠でした。死体はシェリーのものでした。自らの腕を切断したモナがシェリーと入れ替わることで自分の死を偽装していたのです。
キャスト紹介:オールドマンとオリンの怪演が光る
ゲイリー・オールドマン(ジャック・グリマルディ役)
本作の主人公で、マフィアに内通する悪徳刑事を演じています。知性と弱さ、欲望と自制心の間で常に揺れ動くジャックを、オールドマンならではの繊細かつ圧倒的な存在感で演じています。女性と欲に翻弄されてみじめに落ちていく「ダメ男」という、それまでのオールドマン像とはやや異なる役どころで新たな魅力を見せています。
レナ・オリン(モナ・デマルコフ役)
本作最大の見どころであるロシア人女性殺し屋モナを演じているスウェーデン出身の女優。映画『存在の耐えられない軽さ』(1988年)などで知られる実力派で、本作ではファム・ファタール(魔性の女)の極致ともいえる役柄を圧倒的な怪演で体現しています。片腕を失った状態でもジャックを翻弄し続けるモナの狂気的な強さは、本作の最大のインパクトとなっています。
アナベラ・シオラ(ナタリー・グリマルディ役)
ジャックの妻を演じています。映画『ゆりかごを揺らす手』(1992年)などへの出演で知られる女優で、夫の二重生活を知らないまま愛情を尽くす妻の姿を演じています。
ジュリエット・ルイス(シェリー役)
ジャックの若い愛人を演じています。映画『ナチュラル・ボーン・キラーズ』(1994年)などで知られる個性派女優で、本作でも持ち前の天然で危うい魅力を発揮しています。
ロイ・シャイダー(ドン・ファルコーネ役)
マフィアのボス、ドン・ファルコーネを演じています。映画『ジョーズ』(1975年)や『フレンチ・コネクション2』(1975年)などで知られるベテラン俳優で、本作ではモナでさえ恐れる凶悪な老ボスを威圧感ある演技で体現しています。
このほかウィル・パットン、ロン・パールマン、デニス・ファリーナ、ジェームズ・クロムウェル、マイケル・ウィンコット、トニー・シリコ、デイヴィッド・プロバルなど、実力派の俳優陣が脇を固めています。
制作背景:映像の魔術師たちが結集した作品
本作の制作で特筆すべきは、スタッフ陣の豪華さです。
撮影を担当したダリウス・ウォルスキーはポーランド出身の撮影監督で、本作の後にトニー・スコット、リドリー・スコット両監督の専属カメラマンとして世界的な評価を確立していきます。本作での湿った路面に反射する街灯の光、ネオンと闇が入り混じる退廃的なニューヨークの映像美は、ネオ・ノワールとしての世界観を完璧に構築しており、高く評価されています。
編集のウォルター・マーチは、マーティン・スコセッシ監督と並んでフランシス・フォード・コッポラ監督の代名詞的な仕事人として知られ、『地獄の黙示録』(1979年)でアカデミー賞編集賞・音響賞のダブル受賞を達成した伝説的な映像編集者です。マーチの精緻な編集は本作のテンポと緊張感を支えています。
音楽のマーク・アイシャムはトランペットを中心としたジャジーでノワールな音楽を提供しており、本作の退廃的な世界観を際立たせています。
製作はワーキング・タイトル・フィルムズが担当しており、製作総指揮のティム・ビーヴァンとエリック・フェルナーは後に『ブリジット・ジョーンズの日記』『ラブ・アクチュアリー』など数多くの名作を手がけることになる名製作者たちです。
脚本・製作のヒラリー・ヘンキンは本作が映画脚本家としての代表作のひとつとなりました。後にウォシャウスキー監督(現在のラナ・ウォシャウスキー監督)と共同で『バウンド』(1996年)の脚本も手がけています。
評価:興行は失敗もオールドマン&オリンの演技は絶賛
製作費約1,000万ドルに対し全世界興行収入は約700万ドルにとどまり、本作は興行的に失敗作と評されています。批評面でも当初は厳しい評価が相次ぎ、一部の批評家からはノワールのクリシェを過剰に詰め込んだ作品として批判されました。
しかしゲイリー・オールドマンとレナ・オリンの演技については、公開当時から批評家・観客ともに高い評価が集まっています。オールドマンのダメ男ぶり、オリンの底知れない狂気の怪演はいずれも1993年を代表する演技として語り継がれています。
現在ではDVD・ブルーレイおよび動画配信での再評価が進んでいます。ダリウス・ウォルスキーの映像美とウォルター・マーチの編集、そして2人の俳優の怪演という観点から、「見逃された1990年代ネオ・ノワールの傑作」として再評価する批評が増えています。
まとめ:ファム・ファタール映画の極致として今なお輝く異色のネオ・ノワール
『蜘蛛女』は、欲に溺れた男が女の罠にはまり奈落へ転落していく古典的なノワールの物語を、ゲイリー・オールドマンとレナ・オリンという2人の個性的な実力派俳優が体を張って演じた、1990年代ネオ・ノワールの異色傑作です。ダリウス・ウォルスキーの退廃的な映像美、ウォルター・マーチの精緻な編集、マーク・アイシャムの妖艶な音楽が三位一体となって醸し出す世界観は、今もなおその魅力を失っていません。
公開当時は興行的に苦戦しながらも、年月を経て着実に再評価が進んでいる本作を、ノワール映画・ゲイリー・オールドマン・レナ・オリンに関心をお持ちの方にはぜひおすすめいたします。2025年1月には日本でリバイバル上映も行われており、各種動画配信サービスでも鑑賞可能です。
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